父さんの手紙
第1章
父さんから手紙が届いた。砂漠にラクダの写真の絵葉書だ。
「昨日、この国に着いて新しい仕事を始めた。この国には四季がない。ただ風が強い」
僕の家は団地の7階にある。東の窓からは大きな川が見える。
僕は学校から帰り、ランドセルを置くと毎日川を見に行く。
大きな水が動いていくのを橋の上から見るのが好きだ。
川にはいろいろなものが流れてくる。枝や葉っぱ。ゴミや死んだ動物。
たまに死んだ人も流れてくるらしい。
今日、橋の上から見た川は茶色く濁っていた。
底も見えない。空も映さない。
あれは、あの絵葉書の砂漠と同じ色……。
突然
僕は父さんが仰向けになって静かに流れてくる気がして
いつもより大きく目を凝らした。
もくじ (1章)
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