空を売る
第1章
天気予報によると空は降ってこないはずだったのに土砂降りになったから、急いで傘をさして
喫茶店の屋根の下まで走った。
上を見上げると
画用紙みたいに真っ白な中で
太陽だけがぽっかりと浮かんでいて、
もう空は残っていなかった。
「それが今から20年前のことさ」
ぼくの10歳の誕生日の日、父さんは夕焼けを収穫しながら言った。
ぼくはそれを手伝いながら質問する。
「なぜぼくらは空を育てて売っているのに今も世界は真っ白なままなの?」
「空は本当に貴重なものだからね、簡単に元どおりというわけにはいかないのさ。それに一度剥がれ落ちてしまったものは何度だってそうなる。そんなものに金を使うくらいなら、自分の家で空を楽しむために金…
もくじ (1章)
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