廊下で自分の呼吸を聞く
第1章
授業中の廊下は 長くて冷たい。
それほど寒い季節ではないのに
静かさが
むき出しの膝裏にしみる。
教室を追い出されるほどの反抗は
従順というカテゴリーで
皆と一緒にくくられたくないからだ。
先生。
それでも
あなたのいない
どこにも 行く気になれない。
ざらついた教室の壁に
耳をあてすませば
机の間を回り
後ろの引き戸に寄りかかって
あなたが独特のリズムで
リーダーを読む声が聞こえてくる。
ぺたんと腰をおろし
廊下側から
その戸に寄りかかった。
膝をかかえ
見上げる空のつきぬける青さに
すべては
阻害ではなくて
開放なのだと知る。
扉一枚をはさんで
せなかごしに伝わる
静かな抑揚の
あなたの教え。
わたしにとって
大切な人生の一瞬は
扉の向こうで…
もくじ (1章)
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