描け。未来を
第1章
水の呼吸。どこかで聞いたことがあるような言葉だが、私は確かにそこに水の呼吸を感じた。
「この川の水は、どこに辿り着くんやろ」
武庫川沿いの河川敷で私がふと呟くと、それに呼応するように父が開口する。
「どこやと思う?」
「わからへん。三田と宝塚と……うーんと、尼崎と。海まで行くんかな。そうやとすると、めっちゃ長い距離やな」
「それだけじゃないで。海まで行った後、蒸発して雲になり、それがまた雨を降らせる。雨は地球上の自然を育み樹木を育てるんや」
いやいや、そのスケールのことは訊いてへんし……と心底思いながらも私は口に出さず、とりあえず話を合わせておく。
「じゃぁ、木の一部になるんやな」
「まだ続きがある。木は…
もくじ (1章)
作品情報
兵庫県出身の筆者が地元への感謝を込めて
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