こんな痛い話をするつもりじゃなかった。
第1章
その日の三時過ぎ。僕はいつもの作家との打ち合わせと同じように、カバンに資料とノートパソコンを詰める。
が、うまく用意が終わらない。マウスを鞄の外側にあるポケットに入れようとして、うまく入らずに落としてしまったり、うっかり手が滑って、資料をバラバラに床に広げてしまったりと、小さな失態を繰り返してしまっている。
編集者になって、五年目。僕はもう新人とは言えない立場だ。打ち合わせだって、死ぬほどやったことがあるし、企画の立ち上げだって、もうお手の物だ。
なのに今日の僕は、初めて打ち合わせに出る新人編集者のように心が泡立つ。
どうやら僕は緊張してしているようだ。手のひらを見ると手汗で皮膚の表面が少しふやけて…
もくじ (1章)
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痛い話です。他サイトにも載せます。
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