縦書きの雨音を読む
第1章
午後の薄い夕暮れ
突然
開いたページの別れの会話に
縦書きの雨音が重なる。
香る 湿った匂い。
庭の葉の栞。
窓を開けて
首を外に伸ばすと
まだ日に焼けていない
無防備な顔を空に向ける。
閉じた目も唇も
なにより頬が
冷やされて気持ちいいのは
私の体が思いのほか
熱を帯びているからだろう。
あなたは いない。
雨が記憶を連れてくる。
差し出された傘を拒んで
びしょぬれのまま
あなたを見上げたあの時
とうとう
あわれささえ武器にして
なんとか
抱きしめられたいと願った。
ずっと作れなかった
本当の笑顔と泣き顔が
内気な子供がするみたいに
だぶって ゆがんでも
雨がやさしく覆い隠して
あの日から
あなたのかわりに
わたしを抱きしめる。
今
笑顔なのか 泣…
もくじ (1章)
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