闇夜の希望
第1章
高揚した人々の心と、打ち上げられた花火の爆音が共振して空気を震わす。
大輪の花が夜空に咲き乱れ、それは一瞬にして散ってゆく。
「その時、深い孤独を感じるの」
彼女は花火大会へ向かう新幹線の中でそう言った。
新型コロナウィルスが発見され感染が拡大していくと共に社会は一変した。
目に見えないウィルスは体のみではなく、心へも侵入してくるのだと知った。
それに気づくのが遅れたのは、当たり前だった日常が当たり前に立ち行かなくなり、その混沌に対処することに精一杯だったから。
未知なる驚異に、不安や恐怖が空気を震わせ蔓延してゆく。
あたりを見渡せば「皆同じ」
今年は誰も夏の夜空に咲かせる花を見ていない。
暗闇が押し迫る中…
もくじ (1章)
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