鈴木おさむ「月王子」
第1章
思い出すなー。
今から16年前、福岡の繁華街、
天神の雑貨屋「ファイン」の
棚の一番奥でさ、
ほこりをかぶっている僕をさ、
遥が見つけてくれたんだ。
遥は14歳、中学2年生だった。
友達と3人で天神に遊びに来ていて、
たまたま入ったあの店で
僕を見つけてくれたんだ。
僕はあの店に置かれてから5年以上、
誰にも買われることがなかった。
最初は戸棚の一番前にいたんだよ。
だけどさ、誰も僕を見て
「このマグカップ、いいじゃ~ん」
とは言ってくれなかったんだ。
僕のボディーには
「星の王子さま」みたいなイラストが
描かれているでしょ。
正確には「星の王子さま」じゃなく、
「月の王子さま」なんだよな。
星の王子さまとは微妙に違う。
月の上に…
もくじ (1章)
作品情報
放送作家として多数の作品を手掛ける鈴木おさむが、"小説を音楽にするユニット"YOASOBIの新曲の原作として書き下ろした小説です。
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作成日:2020年12月4日