小さな約束をポケットに
第1章 プロローグ
ギュッと絞り込んでピントをあわせて、レンズ越しの世界を切り取る。全部をうつしてしまうのではなく、自分の見ているものだけ。やはり一眼レフカメラは不思議だ。スマートフォンのカメラとは違う。
初夏の匂いと風に包まれる船の上で耳に入ってくるのは、空と海の間を飛び回る鳥の声。人の声はしない。陽とともに見せる顔が変わるビル群。ふんわり髪と服がなびいた。自分とそこにあるものだけ。やはりたまらなく好きな景色だ。カメラは光、音、そして匂いまで切り取ってしまう気がする。
すごく久しぶりな気がする。
このカメラを使って写真を撮るのをやめてしまったのは、いつからだろうか。あの日からかな。
ポチャン
煙草をふかしながら…
もくじ (9章)
作品情報
幸せになってほしいという願いをお互いに持つのであれば、それは約束といえるんじゃないだろうか
離れたところにいても俺は持ち続けてるよ
言葉が背中を押してくれると信じてるから
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