叶わない約束を何度でも
第1章 1章 "その"カメラ
「お父さん、そのカメラかっこいいな僕も欲しい。そのカメラちょうだいよ」
小学生の頃、俺が父によく言っていた言葉だ。プロカメラマンである父はカメラを複数持っていたが、黒い筐体の正面に赤字で文字が彫られた"その"カメラが俺の憧れだった。父のお気に入りのカメラでもある。レンズに太陽光が差し込むと、たまに反射光が赤みを帯びる"その"カメラだ。
「んー。朝陽にはまだ早いな、もう少し大人になったらな」
父は骨張った大きな手の平で俺の頭をくしゃくしゃっとしながら、少し意地悪な笑みを浮かべる。ちょっとくらい触らせてくれたってよいのに。ただその発言は意地悪なわけではなく、よく考えれば当然のことだった。父の大きな手で…
もくじ (15章)
修正履歴作品情報
物語の構想に1ヶ月以上を費やしました。
これがやすだかんじろうとして今できる全てです。
ちょっと長いですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
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