ばあちゃんと僕
第1章
あの頃、ぼくは心がささくれ立っていた。母親にも、家族にも、友達にも教師にも、自分の将来にも、何に対してもイライラして、ひどく投げやりでぶっきらぼうだった。
「たいちゃん」
聴き慣れた声が僕に呼びかけた。
僕はあえて返事をしない。
「たいちゃん、ちょっと手伝ってくれんね?」
それでもなお、ばあちゃんは優しい声で僕に呼びかけた。
「…なんね」
僕はぶっきらぼうに返事をした。
「絹さやのヘタを取りたいんやけど、よう見えんのよ」
ばあちゃんは小さな丸メガネを近づけたり遠ざけたりしながら、困ったようにそう言った。
「なんね、そげんこつ、めんどくさか。」
僕は本当にそう思っていた。
「そんなこと言わんで、ほら、手伝ってくれたら…
もくじ (1章)
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