その言葉の証明
第1章
よし、死のう。
そう決めた瞬間、すっと気持ちが楽になった。
いつもならへとへとの帰り道も、しゃんと背筋を伸ばして歩ける。その足で近所の薬局とスーパーへ。睡眠系の薬と、強い酒を買う。聞きかじった曖昧な情報だが、思ったより簡単に死ぬ準備ができた。
それから30分。港に来たあたしは、右手に鞄、左手にレジ袋を持ったまましゃがみ込んで黒々と広がる海を見ている。真冬の深夜で、さすがに釣り人もいないので、聞こえるのはコンクリートに船の舳先が当たる音と、微かな波の音だけ。
服毒と溺死、どっちにしようかな。薬は確実性がない。ただ、成功したら綺麗に死ねるだろう。あ、でもやっぱり海にしようかな。一息で飛び込んじゃった方が…
もくじ (1章)
作品情報
明けない夜はないなんて、そんな言葉もう聞きたくないんだよ。
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