大火
第1章
私が、吉原に来たのは、まだ5歳の時だった。
私の家は家計が苦しく、破産寸前で、借金をしないと家計が回らなかった。私が生まれてからはさらに悪くなる一方。そこで私の出番だった。
私を吉原遊郭に売ることで、金が手に入る。借金を返せる。家計が回る。破産しなくて済む。
私は金のために売られた。全ては欲望のために。まだ5歳だった私を異郷の地へと売り飛ばしたのだ。
「今日から、あんたは茜だ」
「私は、梅です」
「これからは茜として生きなさい」
実父が去り、私は女将に旦那の前でそう言われる。生まれて5年。急に「梅」ではなく、「茜」として生きろと言われても困る。
私は、私を捨てた両親が憎い。金のために、欲望のために、私を捨て…
もくじ (1章)
作品情報
その日、初めて私は「茜」が好きになった。
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