完結

運命とキス

恋愛

更新日:2021年2月6日

運命とキス

第1章 (前編)


 運命を信じるか、と問われれば、きっとノーと答えていたはずだった。しかし、彼女の姿を正面から見つめた僕は、熱くなった喉元から絞り出すように声を出した。

「久しぶり」

 オフィス街の一角に位置する、僕の働くカフェのドアが開くのと同時に、冷えた空気が店内に混じり込んだ。彼女を見たのは五年ぶりだった。記憶の中とは違い、パンツスーツをきっちりと着こなした彼女は、僕の質問に怪訝な表情を浮かべ、首をかしげた。

「ごめんなさい、どちら様ですか?」

 カフェ店内に流れるボサノバ調のメロディーに、彼女の声が消えていく。熱かったはずの僕の喉元が、一気に冷えていった。
 客としてやって来た彼女に対して、場所もわきまえずに思わず声を…

もくじ (2章)

  • 第1章 (前編) 第1章 (前編)

    第1章 (前編)

    2021年2月4日

  • 第2章 (後編) 第2章 (後編)

    第2章 (後編)

    2021年2月6日

作品情報

僕の働くカフェにやって来たのは、五年前に姿を消した元恋人だった。
「久しぶり」
思わず声をかけた僕に帰ってきた言葉は、意外なものだった。
「ごめんなさい、どちら様ですか?」
本当に何も知らないかのように答えた彼女に、僕は混乱を覚える。
彼女との最後のキスを、僕は今でも思い出せるというのに。

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