ナチュラル感
第1章
新宿駅、始発の小田急線に座って文庫本の表紙を開く。
それが私の異世界への扉だ。
そう遠くないあの頃は、
目を閉じるだけで
いつだって自由に旅が出来たっていうのに。
溢れ出る詩を
必死にこの世界に繋ぎ止めなければならないほどだった。
いつからか、頑張って掘り返してなお
一滴雫を得られるかあやしいほど
カレハテテシマッタ。
私が不在のときにさえ、
もう一つの世界はそこにあった。
今は、強引に何かを紡ごうと箱庭の輪郭を描かなければ始まらない。
だけど、
あの日の宝物はほんものだったのかな。
ときめきが朽ちてしまっただけ?
だとしたら、
賞味期限が切れたのはどちらだ。
私自身ではないと
どれだけ自信をもって否定できる…?
今や望まぬ異…
もくじ (4章)
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