アカネ色の朝焼け
第1章
朝。いつも通り、気分の乗らない朝。
憂鬱で、それでもどこか美しい朝。
僕は、誰にも「おはよう」と言うことなく、家の扉を開いた。
朝日は眩しく、初夏の空は青い。何でもない、ただの日曜日。
その日、僕は家出を決行した。
適当に使えそうな物を詰め込んだリュックを背負い、やや早足で駅までの道を歩く。
美しく輝く朝日と対照的に、僕の心には黒い靄がかかっていた。今にも大雨が降り出しそうな、重い雲のようだ。
通行人から見る僕の顔は、酷いものだったかもしれない。しかし、このときの僕にそんなことを考えている余裕はなかった。
電車に揺られること約十分。
辿り着いたここは、毎朝利用する高校の最寄り駅だ。いつもは制服を纏う生徒たちで…
もくじ (1章)
作品情報
どんなに気に入らないことが起きても、世界に必ず朝はやって来る。
それは、夕焼けのような茜色の朝焼け。
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