綾なす
第1章
この春、私は地元の専門学校を卒業して、都内の食品会社に一般職として就職した。
学生時代、全くと言っていいほど化粧をしてこなかった。真夏に日焼け止めを塗ることさえしなかったけれど、そんな私を友達は誰も咎めなかったし、そのままを受け入れてくれた。
しかし、働き始めると状況は変わった。
入社してすぐに、私は新人研修を共に受ける同期入社の女子社員2人と、お昼を食べるようになった。彼女達は、毎日違うおしゃれなレストランやカフェに行って、ランチするのを好む。華やかでキラキラとした彼女達と、同じ制服を着て都会のど真ん中を歩くことに、私はなんだか引け目を感じていた。
彼女達は、食後に必ず化粧室に寄って、化粧直しをす…
もくじ (1章)
修正履歴作品情報
私は、この春から働き始めた。
今まで、化粧なんてしてこなかったけれど、最近、何だか人の視線がとても気になる。華やかな同期と比べて、私の素顔はなんて粗末なんだろうなんて、思ってしまう。
この不安な気持ちを隠そうと、無理に作った笑顔が顔に張り付いてしまいそうだ。
私は、初任給で化粧品を買うことを決意する。でも、中々、デパートの化粧品売り場にさえ辿り着けなくて‥‥‥。
そんな時に出会ったのは、ドラッグストアの青木さんだった。
自分に自信のない女の子が、笑顔を取り戻すまでの、春の物語――。
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