ヒーロー
第1章
朝を告げる機械音。まだ少し霞む思考と視界。それらを飼い慣らし、隣で気持ちよさそうに眠る彼女の顔を一分ほど眺める。一分が過ぎた頃、この時間を手放さなければならないことを恨みながらも、彼女をこちらの世界へと誘う。朝だよ、と声をかけながら揺り動かす。彼女はものすごく不快そうに顔を歪めながら、長いまつ毛の生え揃った瞼をうっすらと開く。まだ眠り足りない、と言わんばかりの顔をしながら彼女は口を開く。
「…おはよう」
「おはよう」
僕の一連の仕事を終え、今日もまた一日が始まる。
僕たちの朝は早い。六時半には必ず二人が目を覚まし、ベッドを出る。洗面所で顔を洗い、目をしっかりと覚ます。この辺りで霞んでいた思考と視界は…
もくじ (1章)
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ヒーローが世界をつくっている。
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