完結

雨声が雲を破る

エッセイ・ノンフィクション

更新日:2021年2月10日

雨声が雲を破る

第1章


 癒えない傷はだいたい目に見えない。言えないことから目を逸らす大人みたいに、気付かぬうちに羽化していき、やがて真っ黒に汚れた重さに耐えきれず落下する。

「黙っていても言わなきゃわからないよ?」

「…………」

 わたしの気持ちは聞くんじゃなくて聴こうとしなきゃわからない。我慢自慢が賛嘆に変換されるくだらないこの世界に、ぬくぬくと浸かっているあなたのほうがわかっていないんだよ――。

 なんて心の中では駁論して黙る私の視線が複雑に絡まり合う。

 声が出なくなったのは物心付いた時だった。自分が喋っている時の視線と沈黙、あの何とも言えない空気が〝息辛くて〟苦しかった。幼い頃は人見知りという言葉で免除された関門も、今は極…

もくじ (1章)

  • 第1章 第1章

    第1章

    2021年2月10日

作品情報

君は意味がわからないままこれからも生きてね。

制作期間 01/29~02/09(30時間)

羊文学「おまじない」official audio
https://youtu.be/HWkPIHU-APs

物語へのリアクション

お気に入り

0

読書時間

4分

コメント

2

リアクション

24

関連作品

このページの内容について報告する