完結

別れて、待って、その次は。

歴史

更新日:2021年3月27日

別れて、待って、その次は。

第1章 第一章:未だ見ぬ春――一九二一年、蘇州。

「あの曲をやって」
どこで手折ってきたものか、私の衣裳の桃色より一段濃く紅《あか》い梅の花が七分以上開いている枝を一本、傍らの花瓶に挿して腰掛けると、あの人は、蒼白い顔のやや黒目の小さな切れ長い瞳を細めると、低く太い声に反してどこか幼い感じの蘇州話《そしゅうご》で告げた。
「ええ」
頷きつつ思わずこちらは顔が綻ぶ。
二月ほど前からちょくちょくこの妓楼を訪れている日本人のこのお客は、漢文の読み書きはむしろ漢人以上に出来るのだが、いざ話す段になると、まるで十歳くらいの子供のような調子になるのだ。
年の頃は三十前後で十六歳の私の倍近い大人だが、この人が語るのを聞くと、何故か生家にいる弟を思い出す。
六つの時…

もくじ (5章)

修正履歴
  • 第1章 第一章:未だ見ぬ春――一九二一年、蘇州。 第1章 第一章:未だ見ぬ春――一九二一年、蘇州。

    第1章 第一章:未だ見ぬ春――一九二一年、蘇州。

    2021年2月27日

  • 第2章 第二章:夏の終わりに――一九四五年、上海。 第2章 第二章:夏の終わりに――一九四五年、上海。

    第2章 第二章:夏の終わりに――一九四五年、上海。

    2021年3月19日

  • 第3章 第三章:年が明けたら――二〇一九年、シェムリアップ。 第3章 第三章:年が明けたら――二〇一九年、シェムリアップ。

    第3章 第三章:年が明けたら――二〇一九年、シェムリアップ。

    2021年3月22日

  • 第4章 第四章:二人の季節――二〇二一年、横浜。 第4章 第四章:二人の季節――二〇二一年、横浜。

    第4章 第四章:二人の季節――二〇二一年、横浜。

    2021年3月23日

  • 第5章 後書き 第5章 後書き

    第5章 後書き

    2021年3月27日

作品情報

私はもう待つ女ではない。

――2021年3月27日、後書きを追加しました。
――2021年3月27日、各章のサブタイトルに舞台となる西暦と地名を入れました。
――2021年3月23日、第三章を一部修正しました(具体的には男主人公の設定を通信社の記者から新聞社の記者に変更しました)。

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