通勤電車
第1章 (前編)義憤
「うわあああああ」
さっきから、通勤電車の混み合った人たちの中で、子どものぐずる声が止まらない。ベビーカーに乗せられたその子からすれば、窮屈な車内で、お母さんに抱っこされることもできず、周りの景色を見ることもできず、しかも目の前には、見知らぬ人の足があるわけだから、ぐずりたくなるのもわかる。
大人のこちらだって、ぐずりたくなるような状況なのだから。
満員電車、ラッシュアワーというほどではないが、それでも、狭くて、圧迫感があることには何ら変わりない。そこにベビーカーを持って乗ってきた母親は、子どもがぐずる度に、いたたまれないような表情を浮かべて、必死にご機嫌をとろうとする。ただ、子どもはそんな母親の…
もくじ (2章)
修正履歴作品情報
正義と義憤。自分の正しさは、他者によって作られる。
飴玉が起こしたちょっとした奇跡。
通勤電車の中で、ぐずる子供と母親、そして周囲の人々の物語。
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