サリンジャーみたいな 恋がしたい
第1章
「サリンジャーみたいな恋がしたいの。」
クルンと上向きにカールした君の睫毛がふわっと揺れる。
僕の体の中で無数の細胞がざわざわっと震える。
代官山ログロードにある坂の上のカフェ。テラス席からミモザの木が見える。柔らかな光を浴びながら、色鮮やかな黄色い花が気持ち良さそうに輝いている。
僕は読んでいた本の頁に栞をはさむ。藍色のサコッシュから一枚の手紙を丁寧に取り出してテーブルの上でそっとひらく。君の筆跡に視線を落とす。
「お元気ですか。1年はあっという間でした。3月8日にあの場所で待っていてください。」
ミモザの花の甘い香りに包まれながら、1年前の記憶を呼び戻す。同じ場所、同じ時間、君と僕。
「今日はどう…
もくじ (1章)
作品情報
「幼さと知性を兼ね備えた大人になりたい女の子」の物語です
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