右耳
第1章
バチンッ。
大袈裟に鳴ったその音と裏腹に、痛みは少ない。熱を持った耳、差し込まれた金属。
いつもと変わらない顔で鏡に映る自分。もっと痛みに顔が歪むと思っていた。そのせいか、少し虚しくなった。
ずっと、苦しかった。キラキラと光ってみえるランドセル、自分だけの黄色い帽子。二つを身につけて学校にいくことを何よりも楽しみにしていたのに、それが辛い。その事実が何よりも苦しくて仕方がなかった。石を投げつけられて、筆箱を隠されて。誰に言うこともできずに、ただただ俯いて道を歩いていたのを覚えている。
そんな日々から救ってくれたのが君だった。いつもの様に飛んでくる石の粒から身を守るように、ランドセルを頭の上に被せて、…
もくじ (1章)
作品情報
空いた穴を塞ぐように生きてきた。
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