完結

コーヒーみたいな僕たちは

ヒューマンドラマ・日常系

更新日:2021年4月12日

コーヒーみたいな僕たちは

第1章

 最後に言葉をかわしたのは、いつだったのだろう。

 父はほとんど家に帰ってこない人だった。出張やら接待やらで何かと忙しいらしかった。けれどたまの休みには朝早くに起きて、いつもコーヒーを淹れていた。今思えばそれは、父なりの家族孝行だったのかもしれない。

「誰かコーヒー飲む?」

 父の問いかけに、誰も答えない。同じ家の中にいて、僕らはまるで他人みたいだった。それでも父は必ず5杯分のコーヒーを淹れた。僕はどうにもいたたまれない気持ちになって、お気に入りのマグカップに少しだけコーヒーを注いでもらった。
 マグカップをのぞくと、どこまでも深い黒が波を立てていた。僕は父の真似をして砂糖もミルクも入れずに飲んだ。それは決…

もくじ (1章)

修正履歴
  • 第1章 第1章

    第1章

    2021年4月12日

作品情報

【「ものがたり珈琲」コラボ企画】審査員特別賞(優秀賞)
それとも僕たちは欠点豆みたいに弾かれた者同士で、仕方なくまとめられ、家族というラベルを貼られただけなのかもしれない。

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