人語翻訳機
第1章 プロローグ
叩きつけられた紙の束が、病室の床に散らばって落ちる。
「言葉なんかに何の意味がある?」
病床で素子丸出しの機械を頭に付けた老人が、そう言って紙を手渡した少年を睨みつけた。
褒めてもらえると思った少年は呆然として、床に散らばった紙を凝視する。
――届かないんだ……
電流のように駆け巡った感情を、彼はゆっくりと噛みしめる。
この胸の痛みは、例え少年が老人と同じ機械を付けていたとしても、伝達されることはないのだ。
――こんなもんなんだ。
これが、世界の真理なのだと、
少年はそう思った。
もくじ (7章)
修正履歴作品情報
動物と会話できる機会「人語翻訳機」が普及した近未来の世界。
動物と人間のコミュニケーションを支援する「フレンドリー」に所属する創(はじめ)は、
同僚の佐藤と一緒に、とある裁判の行く末を見守ることとなったのだがーーー
SFです。動物と会話できるようになった世界を描いています。(賞に出した短編で手元にあったものです)
最後の章を読まないと叙述トリックがどこだったか分からないですm(_ _)m(間を取るためにも章はだいぶ分けさせてもらいました)
よかったらお付き合いください。
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