よあけ
第1章
さよなら。私の心の中で何度反芻しただろう。
さよなら。その言葉くらいは嘘であってほしかった。でも、あなたが嘘をつかなくても生きていけるようになるためには、そんなわがままなことを言ってはいけないだろう。
部屋の電気を消した夜の中。暗闇に慣れた目と、月の光だけが頼りだった。
あなたと過ごした夜を、今はひとりで過ごしている。
窓辺に座っている私を窓ガラスが無遠慮に映した。無心な私が見つめてくるから、私は笑みを返した。窓ガラスの奥にいる私も笑い返した。簡単な顔して笑わないでよ。
窓辺から移動しようと立ち上がったところで、何かを落としたみたいで軽い音が響いた。何かを拾い上げる。小さなスティック状の何かは、口紅だ…
もくじ (1章)
作品情報
よるのあとのあとどころかよるのまっさいちゅうな気がしますが、いいじゃないですか。おやすみなさい。
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