滲む言葉と春光
第1章
空の夜には星がながれる
わたしの生きているこの一瞬に
地球に降り立つ一瞬の光を
わたしが受け取ったという奇跡
運命のようなその光を
わたしは抱いて夜をゆく
高くなりつつある白い陽射しが廊下へと差し込んで、校舎の片隅にも春の訪れを予感させていた。終了式を終えて明日から春休みを迎える学校に私以外の生徒はおらず、廊下はどこまでも静かだった。
私はその中をひとり歩いて、図書室の隣の司書室の前にたどり着いた。制服のリボンと前髪をすこし直して、スカートを軽くはたく。変なところは無いか一通りチェックをしてから、バッグを肩にかけ直した。
ドアをノックすると、中から「はい」と、男のひとの声が聞こえた。精悍で鋭い、けれどやさし…
もくじ (1章)
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詩がつないでいた私とあの人
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