夜明けのファンタジア
第1章 デイブレイク
眠りに落ちる間際のあなたに、さよならを告げた。
あなたは、私の言葉を聞いていたかしら。
寒さに身を縮ませながら、ベッドで私を抱きしめる腕。
あなたの体温を感じるのに、私の心が虚しさで満たされるようになったのは、いつからだろう。
昨晩、あなたの寝息を耳元で聴きながら、無機質で真っ白な壁を眺めていたら、カーテンの隙間から差し込む街の光が青白い波を描いていた。
それを見ていたら、「ああ、私のいたところは『ここ』なのか」と思った。
静かな白い世界。そこに映る光は私の憧れ。
二人で見たかった世界。
けれど、二人でいても私は一人で、ただ眺めていることしかできない。
朝早く、バイオリンと用意していたスーツケースを手に、彼と…
もくじ (2章)
修正履歴作品情報
『よるのあと』を夜の間の物語と捉え、その後、夜明けまでの「彼女」と「彼」のストーリーを描きました。
バイオリン留学のため出国間近の「彼女」は、彼に別れを告げた翌朝、港に出向きブロンズの人魚像に自身を重ねる(第一章)。
そして、「彼女」が家を出た後、目を覚ました「彼」は不思議な体験をして……(第二章)。
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