完結

蝉とノースリーブ

恋愛

更新日:2021年7月12日

蝉とノースリーブ

第1章

 夏になるといつもあなたのことを思い出す。あなたを思い出させるきっかけになっているのは夏、というよりおそらく蝉の鳴き声で、それが記憶の輪郭を形づくる。たまらず私はあなたの記憶に触れて、喪失を確認する。


「私、蝉が嫌いなの」

 とあなたは言った。トンネルのような蝉の鳴き声の中、私たちは街路樹の下を散歩していた。

「私も嫌いですよ。好きな人なんていないんじゃないですか」

 肌を焼く日差しとクラクラする蒸し暑さで体がどうにかなってしまいそうだった。隣に綾羽さんがいなければ私は情けない声で暑い、暑いと口から溶けだすように言っていただろう。

「そうね。そうよね」

 と彼女は涼し気に言った。真っ白な額に汗ひとつ浮かべていな…

もくじ (1章)

  • 第1章 第1章

    第1章

    2021年7月12日

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