Barあるいは居酒屋
第1章 A男
声が聞えないように窓は閉めた。
パソコンの電源を入れてマイクをセットする。
ヘッドフォンをつけて自分の声がちゃんと聞こえるかを確認した。
放送のタイトルを入れて、間違いがないか確かめた。
小さな部屋から世界中へ繋がっていくためのこの準備は何度やっても高揚感がある。
配信を始めて数年。
何となく話し相手が欲しくて始めたこの枠も、毎回開始と同時にそれなりの人が集まるくらいにはなった。
初めて見るアカウントの人も居れば、勝手知ったる馴染みさんも居る。
顔も本名も知らない人達同士がこうして集まって、下らない話題と時間を共有する。
目に見えない線で繋がっては離れて行く人の気配が心地よくて、辞められなくなった。
最近…
もくじ (2章)
作品情報
『A男』『B子』の2章があります。
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