完結

ただ曇天に在れ

ヒューマンドラマ・日常系

更新日:2021年8月15日

ただ曇天に在れ

第1章

 雨でほどけた提灯は、さながら黄泉とこの世を繋ぐ白い糸だった。
 八月十四日。曇天模様の空からは、時折ぱらぱらと雨粒が落ちてくる。そんな雲ごと天が落っこちてきそうな日に、ぼくは花束片手に墓参りに出た。からっぽのピンクのバケツに井戸から水を汲んで、柄杓をたっぷりの水に沈める。ずっしりとした重みを手に、ぼくは井戸の前から歩き出す。
 ぼくが訪れたのは肉親の墓ではない。一年半ほど前に死んでしまった友人の墓である。ネットで知り合って、実際に会ったのは数回であったが、ぼくにとって彼女――三田は特別な友人だった。
 彼女の名を頼りに、ふるさとから遠く離れた場所まで来るほどに。

(黒井には悪いけど、これは一人でやらなきゃ…

もくじ (1章)

修正履歴
  • 第1章 第1章

    第1章

    2021年8月15日

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ぼくは友人の墓参りに出た。
これはお別れであり、道のさなかだ。

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