楽園のような地獄で
第1章
ゴオと風を残して通り過ぎる列車。出勤ラッシュの駅のホームでは、誰も音も風も気にすることなく、スマートフォンの小さな画面を見ている。俺は、今日もここまで来たのか。朝、同じ時間に起きて、同じような朝食を食べて、昨日と違うスーツを着て、半分死んだように出社する日々。テンプレートすぎて夢と現実の境目も見えない。駅までやって来ると、電車の通り過ぎる音が、俺を現実へ戻す。今日も地獄の日々が始まる。ぎゅうぎゅう詰めにされて、行きたくもない会社へ向かう。逃げたい、苦しい、もう死にたい。ここ数ヶ月で一気にそんな感情に支配されるようになった。数分走ると、多くの人が電車から降りる。俺も降りなければ。分かっているの…
もくじ (1章)
作品情報
仕事辞めたい、もう死にたい。
そんな感情を抱いているサラリーマンの桐生一友。
ある日、仕事をバックレると見知らぬ田舎にやってきた。そこで出会った本宮レイ。
少しの間だけ、誰にも邪魔されない、日常から離れた空間で2人は過ごしていた。
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