シルバーリング
第1章
もうときめかない指輪を付けて、私は夜の街に溶ける。
職場の先輩は酔うとパンプスのヒールで私の足を踏む。なので私は足の甲まで覆えるドレスシューズを履いている。
「もう一軒」という彼女に連れられて、私は見たことのないバーに入った。先輩はしきりに「いいからいいから」と言っていたけど、それは酔ったときの彼女の口癖で、私はこれまで二百回は聞いている。
先輩がカウンター席に座って、コークハイを頼む。私はウィスキーソーダ。薄暗い店内に小さくジャズが流れている。小皿に乗ったナッツが出されて、やがてお酒が出てくる。
先輩は少し口を付けて、それからすぐにカウンターに突っ伏してしまった。
あーあ、こんな来たこともないバーで…
もくじ (1章)
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電撃に撃たれないように
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