貴方に溺れています
第1章 「月が綺麗ですね」
いつかは考えなきゃいけないんだ。
ってそんなことわかっている。
それでも私は、今日も家を抜け出してきた。
公園の、蛍光灯の白い明りが降っているベンチに彼女はいた。
音をたてないようにして私は彼女に近づいていく。
彼女はいつも通りぼんやり虚空を眺めている。
そっと彼女の隣に腰を下ろすと、ほっそりした背中に腕を回した。
体ごと引き寄せて、小さな唇にキスをした。
彼女は細い腕を私の首に回してきた。
唇は離さないまま、お互いの温もりを感じあう。
ふと満たされた感覚があって、くちびるを離した。
彼女はぎゅっと私にしがみついている。
ふわふわした長い髪を撫でる。
安心したように腕が緩められた。
「今日も、月が綺麗ですね。」
彼…
もくじ (2章)
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