完結

あなぽこ

第1章 神社の授与所

「なぁ、この『あなぽこ』って何であいとるんやろ?」

 幼馴染のあずさが、巫女のお姉さんから手渡されたばかりの『お賽銭』を親指と人差し指でつまんだまま、自分の大きな目に押し当て、真ん中にぽっかりとあいた穴から物珍しそうに俺を覗く。
 ウインクが苦手な彼女。大きく開いた目とは対象的に、反対の目はぎゅっと閉じられ、口は変な方向に歪んでいる。

「なぁ、りっくん、聞いとるん?」

「あ、いや、ほんまやな。何なんやろ、これ」

 きっとあずさなりにこの重い空気を変えようとしてくれたのだろう。
 それは鈍いとよく言われる俺にも分かった。
 だから俺もあずさにあわせて、お賽銭にあけられた『あなぽこ』を反対側から覗き込んだ。
 あずさの…

もくじ (6章)

修正履歴
  • 第1章 神社の授与所 第1章 神社の授与所

    第1章 神社の授与所

    2021年9月19日

  • 第2章 バスの乗車口 第2章 バスの乗車口

    第2章 バスの乗車口

    2021年9月19日

  • 第3章 病院の手術室前 第3章 病院の手術室前

    第3章 病院の手術室前

    2021年9月19日

  • 第4章 神社の境内 第4章 神社の境内

    第4章 神社の境内

    2021年9月19日

  • 第5章 あなぽこの向こう側 第5章 あなぽこの向こう側

    第5章 あなぽこの向こう側

    2021年9月19日

  • 第6章 再びバスの乗車口 第6章 再びバスの乗車口

    第6章 再びバスの乗車口

    2021年9月19日

作品情報

電子マネー最盛期の時代。そんな中でも一部の神社では、人が神様に祈りを捧げる時に、現金があった時代の五円硬貨を模した『お賽銭』をお賽銭箱へ投げ入れる風習は続いていた。
――そのお賽銭の真ん中には、ぼっかり丸い『あなぽこ』があいていた。

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