あの線路の先に
第1章 線路はつづくよどこまでも
指輪の跡が消えない薬指をさすりながら、駅前の質屋に寄らなかったことを後悔した。
線路沿いの道を歩いていると電車がひっきりなしにやってきて、私と擦れ違ったかと思うと、また別の電車が私を追い越していく。
今日も誰かがどこかへ出かけて、やがて帰ってくる。
「いってきます」と「ただいま」で帳尻が合うのだから、「さよなら」を告げて私が出ていったあの家には、今夜から私が一人分だけ足りない。
新居に借りたマンションには、電車が走る音が絶え間なく聞こえてくる。騒音が敬遠されるのか、駅から近いわりに家賃が手ごろだった。
「電車がうるさいから昼間は窓を開けないほうがいいですよ。テレビの音量をかなり上げないと聞こえませんか…
もくじ (20章)
修正履歴作品情報
この暮らしを何と説明すればいいのだろうか。同棲ではないだろう。寂しい女が若い男を買っている。いや、飼っているのだ。
第1章~第16章は「二度買われた指輪」として発表した作品です。
第17章以降(12/1現在、第20章まで)は、その一年後の「第二部」という位置付けで、推しの俳優を応援する主人公の恋愛ストーリーとして展開するつもりです。
かつて共に暮らしていた男と再び同居して、男を一流の俳優に育てあげる「育成ゲーム」のような展開にしたいと思っています。
2021.10.25 スタッフオススメの物語に選出していただきました。
物語へのリアクション
お気に入り
9読書時間
じっくりコメント
72リアクション
232