私にはまだ、
第1章
指輪はいつも私たちの間にいた。
彼は左ききで指輪を右手に付けていたから、手を繋ぐと自然と指輪が重なるようになって真ん中にきて、私はそれが嬉しかった。
2人で映画館に行ったときもそこにあって、クライマックスの大事なシーンで彼は触れるようにキスをした。
あのときはびっくりして、少し怒ったけどほんとはすごく嬉しかったんだよ。
…なんて、そんな話もうすることもないんだろうけど。
「ねえ、ほんとに指輪いいの?」
「…うん」
掬うようにカップを持って、彼と同じブラックコーヒーを口に含んだ。
当たり前だけど苦くて、最後だから、って変な理由で彼の真似なんかしなきゃよかったと今更ながらに後悔した。
『いっしょに幸せにな…
もくじ (1章)
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