星移り、秋
第1章
今夜は星月夜だ。
中秋の名月から、半月ほどが経った。
虫の声も少なくなっている。
僕は草原に寝転んで、星を眺めている。
夜に出歩く、ということには眉をひそめられるかもしれないが、家出なんて言う大したものではない。
勉強部屋の窓から抜け出してきたのだ。
受験生になった瞬間、勉強、勉強。
それ以外してはいけないとでも言われているようで息苦しい。
とうとう逃げ出してきてしまった。
「草枕の 我にこぼれぬ 夏の星」
不意に思い出した俳句を口ずさんでみる。
正岡子規だっただろうか。
子供のころ、俳句好きな幼馴染に叩き込まれた知識はもう随分薄れて来ていた。
彼女と僕は、近所の子供たちの中で浮いていた。
僕は周りより幼かったから。
…
もくじ (1章)
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