完結

白寿の指輪

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更新日:2021年10月18日

白寿の指輪

第1章

「ただいまー」

 低く沈み間延びした声で、久しぶりの来訪を告げる。
 建付けの悪い玄関引き戸は、閉めようとすると天邪鬼に抵抗した。

 ここは父母と祖母の住む、古びたわたしの実家。
 祖母の白寿を祝いに来たのだ。

 99歳。体調が不安定で認知症も入ってきている。
 その介護をする両親。末っ子の父はまだ定年したばかりだ。

 気が重い。できれば来たくなんかなかった。
 自然とため息が出る。上がり框に座って靴をそろえる。…誰も来ていない。

 祖母の体調を考慮して、今回は親族そろっての祝い会を取りやめた。助かった。さもなければ、ふたりの伯母や年上の従兄姉たち、その子ども。ぎゅう詰めのこの家にとても来る気にはなれなかったろう。

 子ども…

もくじ (1章)

修正履歴
  • 第1章 第1章

    第1章

    2021年10月18日

作品情報

人の想いというのは、不思議ですね。
鮮やかさと時の経過は関係ない気がします。

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