パパさいてい
第1章
5歳の娘と少しムキになって喧嘩したら、とんでもない言葉が飛び出してきた。
「パパさいてい」
まんまるで黒目がちな目がキッとこちらを睨んでいる。
最低。最も低いと書いて最低。
なんてことだ。可愛い愛娘が、なんだってそんな言葉を知っている。どこで覚えてきた?
いや、そんなことより。手塩にかけて可愛がっている娘がオレを最低と言った。最も低い存在だと言ったぞ。
オレはすぐさま台所に立つ背中に語りかけた。
「ユリ! カエデが最低なんて言葉覚えてるぞ」
ユリは野菜を炒めながら気のない返事を寄越した。
「保育園で最近覚えたらしいよ。気に入ってよく使うの」
「5歳児にそんな言葉使わせるなよ」
「仕方ないじゃない。覚えちゃったんだ…
もくじ (1章)
作品情報
大切な人には、大事な言葉を。
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