彼らのいない時間
第1章 (1)「遅れ」
「こころ」の中はいつも空虚だ。自分の心の中をのぞいても、結局は何もない。皮肉なタイトルだ。
柄谷行人の「こころ」の評論を読みながら、カズは頭の中でしっかりとわかっているつもりだった。漱石の「こころ」に出てくる「先生」は、Kを招き入れることで、「お嬢さん」への恋心に気づく。先生は、自分が認めるKがお嬢さんを好きになるからこそ、急にお嬢さんへの思いに気がつき、行動をする。そして、Kを裏切って、傷つける。
人間は、他人が求めるものを求め、他人が見向きもしないものは必要としない。だから他人がほしがるものをほしがる。「こころ」の中は常にからっぽで、そして、他人がほしがるものをほしがっている限り、必ず自分…
もくじ (5章)
修正履歴作品情報
高校の友人がそれぞれの道を歩んでいく物語
※この物語は「前夜~見えない月に」という作品を元に短編にしたものです。
物語へのリアクション
お気に入り
0読書時間
25分コメント
3リアクション
17