ハニー・トラップ
第1章
とある公園の池。
敷地内から奥まった場所にあるその池は、周囲を背の高い雑草が生い茂って、普段は誰も気づかない。
そんな池の前に、不安そうに今にも泣き出しそうな少女が、辺りをキョロキョロしながら立っている。
年の頃は、十歳になるかならないか、だろうか?
毎日の散歩コースで、池の周りを散策する初老の男性。
普段は見かけない少女の存在に、近くに他の連れが居ないのか、探しながら声を掛けた。
「こんにちは。どうしたのかな?お友だちとはぐれたの?」
すると少女は、小さく首を横に振り、池を指差し言った。
「櫛を落としたの」
「櫛?」
「お母さんの…形見なの」
「形見か…。それは、大切なものだね。ちょっと待ってね。今、網を持って…
もくじ (1章)
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