ある定期券のおはなし。
第1章
おーい、誰か、気がついてくれよ。
呼びかけたって、反応なんてありゃしない。当たり前か、みんな急いでるもんな。
有楽町線と副都心線が通っているこの駅——小竹向原駅では、毎日たくさんの人が乗り換えのために利用する。
皆さん初めまして。ぼくはしがない定期券。可愛らしいピンクのケースに入った、ただの、定期券。ぼくの持ち主は、今朝、見事にぼくのことを落っことして、副都心線からそのまま有楽町線に乗り換えて行ってしまいました。まったく、いつも朝同じ時間に会う男の子に見惚れてよそ見してるからだよ。ちなみにぼくはその子の顔は知らない。だっていつもは、学生カバンのポケットに仕舞い込まれているもの。
「あれ?」
…
もくじ (1章)
作品情報
ぼくは、しがない定期券。
落としものになってしまった定期券と、それをめぐって生まれる小さな恋のお話。
登場人物はこちらの物語にでてくるおふたりです↓
黄色い線の、内側で
https://monogatary.com/story/317119
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