幽霊メトロ
第1章
「ねえ。」
おもむろに新御茶ノ水から乗り込んだ千代田線の車内で彼女が口を開く。
「終電もなくなったメトロではさ、行き場を失った地下鉄がぐるぐるといつまでも回り続けてるんだって。怖くない?」
どうして、そんなことを彼女が思いついたかわからないけれど、一応相槌は打っておく。
「あんまり怖くない。」
「どうして?だって、間違ってそんな地下鉄に乗っちゃったらさ、一生降りられなくなっちゃうじゃない?」
無視しておくこともできるけれど、そうすることはあまり得にならないことを僕は知っている。いや「得にならない」どころじゃない。放っておけば、彼女の機嫌はみるみる悪くなっていき、口をきいてくれなくなる。いや、その口をきい…
もくじ (1章)
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彼女が考える幽霊メトロの話
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