リセマラ
第1章
「あたし、初恋がしたいんだよね」
終業式が数日後に近づき、教室の中の雰囲気も冬休みに向けてにわかに沸き立っていた日。
クラスメイトの三枝奈々(さえぐさなな)は、空気が存在するのと同じくらい自然な口調で言った。教室で後ろの席に座っている三枝の方へ身体を向けて話を聞いていた俺は、思わず「は?」と訊き返してしまった。普段は相手に威圧感を与えたくないので、もっと違うリアクションをとるのだけど、人間の真価が試されるのは、こういった咄嗟の瞬間や、追い詰められた時だと思う。
「だーら、初恋よ、初恋。ハツコイ」
三枝は、三回目はその一音一音を日本語学校の教師みたいにハッキリと発音してきた。別にいいよ、一回で。さすが…
もくじ (1章)
作品情報
来年はいいことあるといいね。
執筆時BGM : 会いたくて / Ado
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