さようならまではまだ
第1章
「母の四十九日の法要の後に、父の今後について話し合いの場をもたせてください」と長男に言われた。遠方にいる三人の子どもたちは、サヨさんの葬儀のため、実家に集まっている。いつだってゆかりのある人の死は、突然だ。夕方、私はケアマネと共に秀忠さんの家を訪れ、サヨさんの白い骨箱を前に手を合わせていた。
93才のサヨさんは、秀忠さんの奥さん。秀忠さんと共にうちの事業所に通い、よく部屋に秀忠さんを呼びつけては、彼の過去の浮気について悪態をついていた。私は、そんな日々を懐かしく思う。もちろん、その悪態は演技だということを介護士たちはみんな知っていた。「九州の女は強いのよ」それがサヨさんの口癖で、ペコペコと頭を…
もくじ (1章)
作品情報
気がつけば『秀忠さん』についての物語が4作品。
これが最後の物語となります。
読んでいただいた方々、ありがとうございました。
完結です。
『おとうちゃん』
https://monogatary.com/story/236991
『短期記憶』
https://monogatary.com/episode/117162
『自販機までの距離』
https://monogatary.com/story/118263
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