かすみそうの、花束を
第1章
“亡くなりました”
その連絡が入ったのは、仕事を終えて、退勤しようとした直前。スマホのそのツルッとした画面にいつもの様に親指を滑らせ、表示させた白い吹き出し。
「……え」
ゴシック体の簡素な文字が脳裏で言葉に変化された刹那、口から零れたのは、疑問符付きの母音一文字。
アルバイト先の後輩が、原因不明の病で亡くなった。
その事実にただ呆然としていれば、手の中で震えたスマホ。取り落としそうになりながらも慌てて電話に出れば、電話口から聞こえたのは、吹き出しの始まりあたりでピースをしていた君の声。
「……本当なの?」
そう尋ねれば、小さく「うん」という返事と、「提案がある」といういつも通りの声の輪郭。
「お葬…
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