シュレーディンガーの猫に春
第1章 第一章「箱入り殺人犯」
私は、生きているけど死んでいる。
まるで『シュレーディンガーの猫』のように生死が重なり合っている。
外からは見えない箱の中では、猫は生きているかもしれないし、死んでいるかもしれないという量子力学の実験のことだ。
私には生きる理由もなければ、死ぬ理由もない。
靴は右から履くか、左から履くかくらい理由がない。
ちなみに私は、きまって同時に履く。
決して難しく考えているのではない。
箱の中の私は、さっさと死ぬ理由を見つけて、死のうと思っている。
きっと、死への好奇心があるんだと思う。
パン屋さんで硬いフランスパンをトントンしたくなる、そんな好奇心だ。
縁起でもないから口を慎めという人もいる。
でも、殺人犯に縁起なんても…
もくじ (4章)
修正履歴作品情報
自殺願望をもつ殺人犯の有江ユリは、死にきれないでいた。
”死にそうなヒヨコだけ”を選別するバイトを通して、人が死ぬ理由を見つけていくが―。
(全四章構成)
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
物語へのリアクション
お気に入り
0読書時間
20分コメント
2リアクション
33