されど、蒼
第1章
しとしとと雨が降る。教室の窓に次々に雨粒は打ち付けて、一筋残して落ちてゆく。
社会の先生の声がひときわ大きくなる。ドッと笑い声が響く教室。うけたらしい。聞いとけばよかった。そんな事を思いながらも、私の視線が窓の外に向く。
雨は嫌いだ。見たいものが見えない。
まるで一瞬毎に姿を変えるモザイクの様に、いつもなら見える校庭も、体育館の屋根にある風見鶏も、そしていつも眺めている理科準備室でさえぼやけさせて歪ませる。
形が崩れた風見鶏はまるで私の心みたいだと思った。
でろでろ。どろどろ。ずぶずぶ。
どんな表現が合うかなんて分からなかった。だけど、そんな擬音語を遣うのは何だか抵抗があった。心の中に閉じ込めた私が叫ぶ…
もくじ (1章)
作品情報
過去も現実も未来も、私が泣いたって、泣かなくたって、変わらない。
でろでろ、ずぶずぶ、どろどろ、この恋に、春なんて言葉が遣えない事は、誰だって知っている。
何をしても、その深淵に飛び込まなければ、満たされないというのなら――……私は、もう、何も要らない。
未来も、進路も、将来も、何も。
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