厚揚げのあんかけ
第1章
学校から帰って玄関のドアを開けるとリビングに続く廊下には毎日何かしらの破片が散乱していた。時には、花瓶だったり、時には茶碗だったり。
私はいつも靴箱からスリッパを出して、それらが刺さらないように、新聞を引っ張り出して、『無』の状態で散らばった破片を片付けた。母は、相変わらずベッドに寝ていた。保健所から引き出してきたヨークシャテリアのブブは、私が、帰宅するまではいつも狭いキャリーに入れられたまんま。母が散歩に連れて行くことはなかった。可愛いと自分が連れて帰ったくせに。
若年性更年期障害がどんなものかわたしにはわからなかったけれど、母は時々、狂ったように物を投げつけては、夜中だろうと部屋中を走り回っ…
もくじ (1章)
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